【VILLAGE通信 vol.20】土鍋の8割が、この町で焼かれる 三重県

三重県の国指定は四日市萬古焼、伊賀くみひも、鈴鹿墨、伊賀焼、そして伊勢形紙です。
この5つ、性格がまるで違います。
冬の食卓の、8割
四日市萬古焼は、土鍋の国内シェアがおよそ8割とされます。
今夜どこかの家で使われている土鍋の、8割がこの町で焼かれた。そう考えると、少し不思議な気持ちになります。
強みは耐熱性です。ペタライトという鉱物を配合することで、直火にかけても割れにくい生地になりました。
始まりは江戸時代中期。沼波弄山が「万古不易(いつまでも変わらない)」の印を押したことが、名の由来と伝えられます。
「いつまでも変わらない」と名づけた焼き物が、鍋というもっとも壊れやすい使われ方で全国の8割を取った。名前の通りになっています。
工芸品ではなく、「用具」
伊勢形紙は、鈴鹿市の白子・寺家でつくられる型紙です。着物を染めるとき、布の上に置いて模様を写すための紙。
そして重要なのはここです。
伊勢形紙は「工芸品」ではなく、工芸品をつくるための「用具」として国の指定を受けています。用具としての指定は、これが最初の例でした。
京友禅も、東京の小紋も、この紙がなければ染められません。他の産地の裏方として、全国のほぼすべてを供給している。
高知の土佐和紙は文化財を直す紙でした。三重の伊勢形紙は、着物を染める紙。紙は、それ自身が主役でない場所で強くなる。
もうひとつの墨
鈴鹿墨は、奈良墨と並ぶ数少ない国指定の墨です。
前号で書いたとおり、墨の9割以上は奈良でつくられます。その残りの多くが、この鈴鹿にある。
9割の産地と、それ以外を支える産地。両方が指定されていることに、意味があると思います。
伊賀の、ふたつ
伊賀くみひもは、絹糸を組んで帯締めや羽織紐にする工芸です。伊賀焼は、耐火性の高い土を使った焼き締めの器。萬古焼と同じく、火に強い土がこの地域の資産でした。
5品目、全部ちがう役
鍋で8割を取る。型紙で他産地を支える。墨で奈良を補う。紐を組む。土を焼き締める。
ひとつの県のなかで、これだけ役割が分かれている県も珍しい。
次号は滋賀へ。武具の職人が、まったく別のものをつくり始めます。
参考:三重県、四日市市、鈴鹿市、経済産業省「伝統的工芸品の指定」、伝統的工芸品産業振興協会
——Value Village編集部