【VILLAGE通信 vol.24】そろばんの7割、毛鉤のほぼ全部 兵庫県

近畿の最後、兵庫県です。国指定は播州そろばん、丹波立杭焼、出石焼、播州毛鉤、豊岡杞柳細工、播州三木打刃物の6品目。
この6つ、全部別の場所にあります。南の播磨、北の但馬、中央の丹波。ひとつの県のなかに、文化圏がいくつも入っています。
そろばんの、7割
播州そろばんは小野市を中心につくられ、国内生産のおよそ7割を占めるとされます。
始まりは天正年間。秀吉の三木城攻めを逃れて大津へ避難した住民が、そこでそろばんの製法を覚えて持ち帰ったと伝えられます。
西陣織は、戦で散った職人が戻ってきて生まれました。播州そろばんは、戦で逃げた住民が向こうの技術を持ち帰って生まれた。
避難先で覚えてきたことが、四百年後の地場産業になっています。
毛鉤は、ほぼ全部
播州毛鉤は西脇市を中心につくられる、釣り用の毛鉤です。鉤に鳥の羽や絹糸を巻き、水のなかで虫に見せる。
国内生産のほぼ全量が、この地域でつくられています。
三重の伊勢形紙と同じです。ひとつの地域が、ひとつの道具の全国を背負っている。
シェアが高いことは強さですが、同時に、そこが止まれば代わりがいないということでもあります。
六古窯、ふたつめ
丹波立杭焼も、日本六古窯のひとつです。
vol.21で取り上げた滋賀の信楽焼、vol.11の岡山の備前焼──この連載で、六古窯のうち三つ目になりました。
丹波の特徴は、登り窯で長時間焼くときに降りかかる灰・ビードロです。釉薬を掛けなくても、灰が溶けて自然の釉になる。
備前も同じでした。釉を掛けない焼き物は、火に任せる分だけ二つと同じものができません。
白磁の、もうひとつの産地
出石焼は、豊岡市出石でつくられる白磁です。地元で採れる白い陶石を使い、すべて白で仕上げる。
vol.03の有田焼、vol.04の波佐見焼、vol.16の砥部焼に続く、磁器の産地です。
有田は色絵で、砥部は呼ばれるのが早く、出石は「白だけ」でやっています。
かばんの町の、前の姿
豊岡杞柳細工は、コリヤナギという柳を編んでつくる籠です。
豊岡はいま、国内を代表するかばんの産地として知られています。その原点が、この杞柳細工でした。
「ものを入れて運ぶ入れ物」をつくる技術が、素材を変えて生きのびた。
素材を変えても、作るものの「目的」が同じなら、産業は続く。
近畿を、回りました
和歌山は畑で、奈良は書と茶の道具で、三重は役割分担で、滋賀は転身で、京都は数で、大阪はプロの支持で、兵庫は地域の多さで。
七つとも、違いました。
次号からは中部へ向かいます。
参考:兵庫県、小野市、西脇市、豊岡市、伝統的工芸品産業振興協会
——Value Village編集部